風邪をひいて、治ったとおもったら咳だけ止まらない。このような症状のかたが増加しています。いわゆる「風邪」は、大半がウイルス感染、ときに細菌感染によるもので、ほとんどが対症療法で、細菌感染の場合には抗菌薬の内服により、1週間以内に症状が改善します。ところが、風邪症状のあとにひどい咳が長引いて眠れない、仕事にならない。そんな症状が続く場合は一度受診をおすすめします。『感染後咳嗽(がいそう)』(一過性のもの。繰り返さない)や『咳ぜんそく』(放置すると気管支ぜんそくに移行することがある)の可能性があります。これらは気道の粘膜に炎症が起きている状態です。外来ではまず、次のような病気の否定のための検査を行います。
①胸部レントゲン検査:結核や肺炎、がんなどの区別
②採血検査:炎症やアレルギー、百日咳などの検査
③呼吸機能検査:喘息の可能性の診断
④痰の培養、細胞診検査
細菌による肺や気管支の炎症とわかった場合には、抗菌薬の投与をおこないます。ほかの病気が否定され、咳ぜんそく、気管支ぜんそくと診断された場合には、気道の炎症をおさえるために、ストロイド吸入またはステロイド+気管支拡張薬の吸入を中心に治療を行います。
ぜんそくは子供だけの病気ではありません。大人になって初めて発症する可能性もありえます。気道が炎症を起こし、また落ち着きを繰り返し、気道の壁が厚くなることをリモデリングといいますが、これを適切な吸入薬で落ち着かせ、発作をおこさないこと、すなわち、ぜんそくの発症を予防することがとても大切になります。発作が起きていないからということで、吸入や内服を自己判断で中断される方がおりますが、上記のような理由から、自己中断することはリスクを伴いますのでおすすめできません。一度受診の上、ご相談ください。
最近メディアでも取り上げられておりますが、慢性的に続く咳の原因の15%ほどが、『逆流性食道炎』という、胃液が食道の方に逆流する病気である可能性も見逃してはいけません。逆流した胃液の刺激で咳が誘発されている状態です。そのため、長引く咳で受診されるかたに「健診(胃内視鏡検査)で逆流性食道炎といわれたことはありませんか?」と質問し、心当たりのある方には、診断的な治療として、胃酸の分泌を抑える治療をおすすめすることもあります。この薬の内服により改善した場合には、咳の原因が「逆流性食道炎」であったことになります。